「もう近づかない」
廣川大起容疑者(26)は接近禁止命令を受けた際、そう話した。しかし2026年3月26日夜、彼は春川萌衣さん(21)の首などを少なくとも5回刺した。規制と命令は、執着を止めることができなかった。
この事件はストーカー規制法という法律の実効性を、改めて社会に問いかけている。被害者を守るために何ができるのか。そして今の法律には何が足りないのか。
新たに判明した事実|少なくとも5回の刺突
捜査関係者への取材で、廣川容疑者が春川さんの首などを少なくとも5回にわたって刺していたことが明らかになった。警視庁は廣川容疑者が一方的に執着心を募らせていたとみて、詳しい経緯を調べている。
接近禁止命令が出された際、廣川容疑者は「復縁したかった、もう近づかない」と話しており、今月12日までは接触が確認されていなかったという。表向きは命令を守っているように見えた。しかし内側では何かが膨らみ続けていた。
そもそもストーカー規制法とは何か
ストーカー規制法(正式名称:ストーカー行為等の規制等に関する法律)は、2000年に施行された法律だ。同年に起きた桶川ストーカー殺人事件をきっかけに制定された経緯がある。
法律が規制する「つきまとい等」の行為は以下のように定められている。
- 待ち伏せ・つきまとい・押しかけ
- 監視していると告げる行為
- 面会・交際などの要求
- 粗野・乱暴な言動
- 連続した電話・メール・SNSでの連絡
- 名誉を傷つける内容の送付
- 性的羞恥心を害する内容の送付・送信
- GPS等を使った位置情報の無断取得(2022年改正で追加)
これらを繰り返す「ストーカー行為」には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。警告・禁止命令・逮捕という段階的な対応が取られるのが一般的だ。
法律の「抜け穴」と限界
ストーカー規制法には、いくつかの構造的な課題がある。
まず禁止命令に強制力がない点だ。命令に違反した場合は罰則があるが、違反を「未然に防ぐ」仕組みは薄い。廣川容疑者のケースでも、接触が確認されなかった期間があったにもかかわらず、最終的に命を奪う行為に至った。
次にカウンセリングの任意性だ。今回の事件では警視庁が廣川容疑者にカウンセリングを働きかけたが、拒否された。ストーカー加害者への心理的介入は再犯防止に有効とされているが、現行法では強制できない。
さらに被害者側への負担の問題がある。春川さんは身の安全のために避難しながらも、「夢の職場を変えたくない」という理由でポケモンセンターでの勤務を続けた。本来、被害者が生活を縮小させなければならない構造そのものが問題だ。加害者を隔離・監視する仕組みが十分でなければ、被害者は常に「逃げ続ける」側に置かれてしまう。
春川さんを知る人の言葉
「家族みんな仲良かったですよ。いつもおつかいにいって重い荷物なんか持って、お母さんのサポートしたりして。すごくショックです」
礼儀正しく、明るく、家族思いだったと語られる春川さん。21歳の彼女が奪われた命は、制度の不備が生んだ犠牲とも言える。
「もう近づかない」という言葉が意味しなかったこと
ストーカー規制法は被害者の声を法的に受け止める仕組みとして重要だが、加害者の「内面の執着」を変えることはできない。言葉で約束させ、命令を出すだけでは不十分なケースが、今回のように存在する。
被害者が何度も助けを求め、加害者が2度逮捕され、命令まで出されていた。それでも最悪の結末を迎えた。法の運用と制度設計の見直しを、この事件は強く求めている。
予測不可能な凶悪事件がいつどこで起きるか分からない今、商業施設などでパニックが起きた際や、日常の外出時に子どもとすぐに連絡が取れる手段を持たせておくことは必須の防犯対策です。万が一はぐれてしまった時でも居場所を正確に把握できるよう、みまもり機能が充実したキッズケータイ「Hamic」
などの防犯ツールを早急に導入し、いざという時に家族の命を守るための準備を見直してみてはいかがでしょうか。


