2025年1月、フジテレビは元SMAPメンバーでタレントの中居正広氏に関する性的暴行疑惑を受け、重大なコンプライアンス違反問題に直面しました。この問題は、フジテレビの社員が中居氏と20代女性との会食をセッティングしたとされるもので、同社のガバナンス体制や危機管理能力に対する批判が高まりました。
問題の経緯
2024年12月、週刊文春などの日本のタブロイド紙が、中居氏が2023年6月に20代女性に対して性的暴行を行ったと報じました。報道によれば、フジテレビの社員がこの会食を手配しており、同社が事件を認識しながら公表しなかったとされています。フジテレビの港浩一社長は、女性のプライバシーと回復を尊重するために情報公開を控えたと説明しましたが、これがさらなる批判を招く結果となりました。
記者会見とその批判
フジテレビはこの問題に関して記者会見を開きましたが、特定のメディアのみを招待し、ライブ配信や録画を禁止するなど、その閉鎖的な対応が批判を浴びました。アメリカの投資ファンドであるダルトン・インベストメンツの関連団体からは、フジテレビの対応が企業統治に重大な欠陥を露呈していると指摘され、公開の記者会見を求める公開書簡が送られました。
その後、フジテレビは第三者委員会を設置し、問題の調査を進めると発表しましたが、当初の委員会構成が同社と関係のない弁護士のみで構成されていたため、さらなる批判を招きました。これを受けて、同社は日本弁護士連合会のガイドラインに沿った新たな第三者委員会を設置する方針を示しました。
経営陣の辞任と影響
2025年1月27日、フジテレビはこの問題の責任を取り、港浩一社長と親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの加納修司会長が辞任することを発表しました。新社長には清水賢治氏が就任し、1月28日から業務を開始しました。
この問題を受けて、日産、トヨタ、キリンホールディングス、花王、セブン&アイ・ホールディングス、資生堂、任天堂など、多くのスポンサー企業がフジテレビへの広告出稿を停止しました。また、キッコーマンは提供番組「くいしん坊!万才」の放送見合わせを要請し、シオノギヘルスケアは音楽番組「ミュージックフェア」からスポンサー名を外す決定をしました。これらの影響により、フジ・メディア・ホールディングスの株価は13%以上下落しました。
「重大コンプラ違反でも放送免許取り消しはない」と政府の答弁
2025年2月4日、村上誠一郎総務相は衆議院予算委員会において、フジテレビの一連の問題に関連し、放送局に重大なコンプライアンス違反があった場合でも、電波法上「放送免許の取り消し事由として規定されておらず、これによって免許を取り消すことはできない」と述べました。
この発言は、日本維新の会の藤巻健太議員からの質問に対する答弁として行われました。村上総務相は、放送免許の取得時には「放送業務を維持するに足る経理的な基礎を有していなければ与えられない」と説明しましたが、免許取得後については「経理的な基礎を欠くことが電波法上、取り消し事由と規定されておらず、免許を取り消すことはできない」と述べています。
この答弁に対し、ジャーナリストの津田大介氏は自身のX(旧Twitter)アカウントで、「これは村上大臣が言ってることが原則論として正しい」とコメントしています。
この問題は、放送局のコンプライアンス体制やガバナンスの在り方、そして電波法や放送法の規定に関する議論を呼び起こしています。特に、放送局の重大な違反行為に対する法的な対応や、免許取り消しの基準について、今後の法改正や制度見直しの必要性が指摘されています。
コンプライアンスとガバナンスの課題
今回の問題は、フジテレビのコンプライアンス体制とガバナンスの欠如を浮き彫りにしました。特に、社内調査の遅れや情報管理の不備、危機対応の不適切さが指摘されています。港社長は被害女性の意思を尊重するために情報を制限したと説明しましたが、内部統制の観点からは明らかな違反とされています。また、記者会見の運営方法や第三者委員会の設置に関する対応も、企業統治の観点から問題視されています。
今後の展望
フジテレビは、新たな経営体制の下で、コンプライアンスとガバナンスの強化に取り組む必要があります。特に、内部統制の徹底や危機管理能力の向上、情報公開の透明性確保が求められます。また、スポンサー企業や視聴者からの信頼回復に向けて、具体的な改善策を示すことが重要です。
今回の問題は、メディア企業としての社会的責任と倫理観が問われる事態となりました。フジテレビがどのようにして信頼を取り戻すのか、その取り組みに注目が集まっています。
コメント